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5.22021
古い鏡台の修理 分解してから再塗装のリペア
家の中を見直す時間が増えたのか、新品の家具の買い替え需要と同じくらい、修理リペアのお問い合わせが増えています。
今回修理させていただいた年季の入った姿見は、ご依頼者のお祖母様が使われていたということでした。材料は桑。この時代の鏡台にはよく使われていた材料です。独特な木目が年代を感じさせますが、共通しているのはこの時代は良い材料を使っていた物が多いです。そのため経年で劣化はしていても再生が可能。今回、なるべく使える部品は残したいということで、新調したのは鏡だけです。金具や鏡を止めていた細い桟木、裏板などはすべて再利用です。
全体的に細いフレームを組み合わせていたため、ちょっと力を加えると外れてしまいそうな鏡の枠。塗装前にできる限り修理して、補強をしてからの再塗装になりますが、まずはある程度古い塗料を落とす必要があり、全体をサンドペーパーでなるべく削らないよう表面の塗装を剥がします。
古い塗装を剥がしたのちに、ここから着色に入ります。最初の状態より若干濃い目を狙います。これは隠しきれない経年の傷や色の変色を目立たなくするためです。テーブルや椅子などのリペアもそうですが、もともとの状態よりも若干濃い目での再塗装をご提案しております。この方にはおまかせをいただきました。
ふたたび木目が現れた状態の塗装完成。こってりと塗装をしてしまうと風合いがわざとらしくなるので、ここは元の状態を想像しながらの仕上げになります。この間に鏡も用意してありましたので、最終組立てて完成させます。
部材によって色の濃淡があったので、統一感を出すためにその濃い部分に合わせて全体を調整。この姿見、組立には一切の接着剤等を使っておらず、木の組み方で強度を出しています。良い仕事の姿見だなぁとあらためて感じました。
本当はこの裏板は新しいものを用意したかったのですが、ご依頼者がなるべく使える物は利用して欲しいとのことで、再生しました。鏡をささえる板なので、強度を考えると新品の材が妥当かなと思いましたが、再生してみて全体の雰囲気を見ると、やはり再利用してよかったなと感じました。
きっとまだ日本人の平均身長がもっと低い時代の姿見なのでしょう、とてもコンパクトで鏡が垂直の状態では全身が映せません。横ネジを使っているので角度を変えると今でも十分に姿見として利用できます。でもこの姿見は存在そのものがきっとお祖母様がいまでもそばにいるという事が大切だったんだろうと思います。(私から見ると)とても若い方が持ち込みされましたが、喜んでいただけて本当によかったです。