ちょっと前に新卒の給料で買ったアンプの話をここに書いた。

２０年前のアンプを今また使っているけど
これが異常に暑い！
こんな熱もったっけ？って思うくらいに部屋の中が暑くなる。

音はいい。申し分ない。
けれどこの暑さ、エアコン使わない我が家でも
このアンプにはまいった、完敗です。

これだとリラックスするはずの音楽が苦行に感じられるので
せめてアンプだけでも夏場に使う代替品がないのか
近くの大型電気店に行ってみた。

無かった。

今や、アンプとスピーカーと選んで、なんて一つ一つを買い足す時代では
無かったようだ。

もう一度、家に帰り、書斎と言えるか分からないが自分の仕事をする
スペースに座って見回してみた。

目の前にあるmacは最近買ったもの。

机として使っているダイニングテーブルは２０年位経過したもの。

椅子は、結婚したばかりの時に勢いで購入してしまった
ハンスウェグナー直筆署名入りのザ・チェア。
これがまた座り心地が良くて、今もいつも毎晩座っている。

そして足下にはサウナを作り出してくれるアンプ。

そのアンプに繋ぐヘッドフォンは大学時代に秋葉原で買ってきた
これまたヘッドフォンと呼ぶには大げさな作りだけど
信じられない音を出してくれるマニアックな逸品。

自分の半径１mの範囲にある自分の好きな物を見てみると
新旧織り交ぜながら時間的なスケールでは２０年のスパンがある。

そう、２０年なんてあっという間。

昨日の夜、イタリアの巨匠、ピニンファリーナの訃報がネットで分かった。

クルマに興味が無いとあまり聞かない名前かもしれないが
私もクルマには頓着無い方で、いままで乗ってきたクルマも
ブランドで選んでいた訳でなく、三菱もスバルもトヨタもホンダも
あ、日産だけはまだ乗ってないけれど、その時代に自分が必要だと
感じて購入したクルマを選んだので、メーカーはばらばら。

でも、その中で今までに一番印象に残ったのが
ホンダのシティカブリオレ。オープンカーである。

中古で買ったマニュアル車、パワーステアリング無しなんて
今の時代では不評きわまりないクルマだけど、とにかく面白かった。

壊れかけていたカセットのラジオしか付いてなかったし
エアコンも効きが悪くて真夏には意味ないくらいの性能だった。

乗り心地が良い訳ではなかったけれど
ひとたびオープンにして走り出すと、たかだか６０馬力しか無いクルマが
とても特別な性能を手に入れたかのように疾走する感覚を得られた。

しかもとても燃費も良くて、その当時のクルマでリッター２０を出したし
余分な電装が無かった分、走りに徹して燃費が良かったんだろうと思う。

そのホンダシティカブリオレのデザインを手がけていたのが
亡くなったピニンファリーナであった。

２０年、とても長い時間の経過を感じるが
実は一番経年変化しているのは人間であって
モノたちは、特に基本性能が高いものほど、最初から最後まで
まったく同じ性能で使う人に応えてくれているのではないのだろうか。

こちらが勝手に古いものと決めつけているものでも
実は変わってしまったのは使う人だけで、モノ自体には何も変化が無かったんだと。

よく、一生使えるものを探していますというメールをいただきます。

今、製作中の物がかならず一生使えると断言はできませんが
そうなる事を予測して作り出しているものばかりであることは変わらないです。

大切にするという気持ち次第で、ものの見え方が変わってきます。

亡くなったピニンファリーナの作ったカブリオレのように
いつまでも記憶に残るような、面白くて楽しめる物を作り出していきたいと思います。